精神障害者が国からもらえるお金とは?種類・金額・条件を解説

精神障害者が国からもらえるお金とは?種類・金額・条件を解説 マネーコラム

うつ病や統合失調症などで働くのが難しくなったとき、まず気になるのは生活費です。精神障害者が国からもらえるお金には、障害年金や特別障害者手当など複数の制度があります。ただし、制度ごとに対象や金額が違います。手帳を持っているだけでは受け取れないものも多いです。

この記事では、精神障害者が国からもらえるお金を令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の金額で整理します。手帳の等級との関係、働きながら受給できるか、申請先まで順に見ていきます。自分がどの制度に当てはまるのか、読み終える頃には判断できるはずです。

  1. 精神障害者が国からもらえるお金には何がある?
    1. 主な制度は障害年金・特神障害者手当・年金生活者支援給付金
    2. 現金給付と負担軽減(減免・控除)の違いとは?
    3. 国の制度と自治体独自の制度はどう違う?
  2. 精神障害者保健福祉手帳を持っているだけでお金はもらえる?
    1. 手帳の取得だけでは現金給付は発生しない理由
    2. 手帳の等級と障害年金の等級はなぜ一致しないのか?
    3. 手帳があると受けられる減免・割引の一覧
  3. 障害年金はいくらもらえる?令和8年度の金額
    1. 障害基礎年金の1級・2級の年額と月額
    2. 障害厚生年金の1級・2級・3級の計算方法
    3. 子の加算・配偶者加給年金が上乗せされる条件
  4. 精神障害で障害年金の対象になる病名と条件とは?
    1. 対象となる主な精神疾患(うつ病・統合失調症・双極性障害・発達障害など)
    2. 初診日・保険料納付要件・障害認定日の3つの要件
    3. 精神障害の審査で重視される「日常生活能力」の判定とは?
  5. 働きながら障害年金をもらえる?
    1. 就労していても受給できるケースと難しいケース
    2. 障害者雇用・就労継続支援A型/B型での扱いの違い
    3. 精神障害で3級・障害手当金が認定される条件
  6. 年金生活者支援給付金はどんな人が受け取れる?
    1. 障害年金1級・2級受給者に上乗せされる金額
    2. 前年所得の要件と申請方法
    3. 障害年金と別に手続きが必要な理由
  7. 特別障害者手当はいくら?精神障害でも対象になる?
    1. 令和8年度の月額と支給時期
    2. 精神障害で認定されるための障害の程度
    3. 本人・配偶者・扶養義務者の所得制限
  8. 20歳未満の精神障害者や家族が受け取れる手当とは?
    1. 障害児福祉手当の金額と対象
    2. 特別児童扶養手当の1級・2級の金額
    3. 20歳前に初診日がある場合の障害基礎年金の扱い
  9. 自立支援医療で通院費はいくら安くなる?
    1. 精神通院医療の自己負担が1割になる仕組み
    2. 所得区分ごとの月額上限
    3. 申請窓口と更新の手続き
  10. 税金や公共料金で受けられる減免・控除とは?
    1. 所得税・住民税の障害者控除の金額
    2. NHK受信料・携帯電話料金・公共交通機関の割引
    3. 自治体が独自に行う手当・助成の確認方法
  11. お金がもらえなくなる・減額されるのはどんなとき?
    1. 所得制限を超えた場合の支給停止
    2. 更新(現況届・診断書提出)を忘れたときのリスク
    3. 入院・施設入所・海外居住による影響
  12. 生活保護と障害年金は同時にもらえる?
    1. 併給できるが生活保護費から年金分が差し引かれる仕組み
    2. 障害者加算が上乗せされる条件
    3. どちらを優先して申請すべきかの考え方
  13. 国からもらえるお金の申請はどこに相談すればいい?
    1. 年金事務所・市区町村障害福祉課・精神保健福祉センターの役割
    2. 申請に必要な書類(診断書・病歴就労状況等申立書など)
    3. 社労士に依頼する場合の費用と判断基準
  14. 精神障害者が国からもらえるお金に関するよくある質問
    1. 精神障害者保健福祉手帳3級でも障害年金はもらえる?
    2. 障害年金は何歳から申請できる?
    3. 過去にさかのぼって障害年金を請求できる?
    4. 家族と同居していると手当はもらえない?
    5. 障害年金をもらうと会社に知られる?
  15. まとめ
    1. 参考文献

精神障害者が国からもらえるお金には何がある?

「国からもらえるお金」と一口に言っても、中身は1つではありません。現金で受け取れるもの、支払いが安くなるもの、国ではなく自治体が出しているもの。この3つを分けて考えると、全体像がつかみやすくなります。まずは制度の地図を頭に入れましょう。

主な制度は障害年金・特神障害者手当・年金生活者支援給付金

精神障害のある人が国から現金として受け取れる制度は、主に3つです。障害年金、特別障害者手当、年金生活者支援給付金です。このうち金額が最も大きいのは障害年金です。生活の柱になる制度と考えてください。

特別障害者手当は、重度で常に介護が必要な人向けです。年金生活者支援給付金は、障害年金1級・2級の人に上乗せされます。3つの関係を表で確認しておきましょう。

制度名 対象のイメージ 令和8年度の金額目安
障害年金 精神障害で日常生活や仕事に支障がある人 月額約7万〜8.8万円(基礎年金)+厚生年金分
特別障害者手当 20歳以上で常時特別の介護が必要な人 月額30,450円
年金生活者支援給付金 障害年金1級・2級で所得が一定以下の人 月額5,620〜7,025円

現金給付と負担軽減(減免・控除)の違いとは?

上の3つは「現金給付」です。口座にお金が振り込まれます。一方で、「負担軽減」と呼ばれる制度もあります。医療費の自己負担が下がる、税金が安くなる、といったものです。

負担軽減はお金を受け取る制度ではありません。 出ていくお金を減らす制度です。自立支援医療や障害者控除がこれに当たります。どちらも生活を支える効果はあります。ただ、「もらえるお金」として期待すると、見込み違いになります。

国の制度と自治体独自の制度はどう違う?

障害年金や特別障害者手当は、全国どこに住んでいても同じ条件、同じ金額です。法律で決まっているからです。これが「国の制度」です。

一方、市区町村が独自に出している手当もあります。たとえば「心身障害者福祉手当」のような名称で、月額数千円を支給する自治体があります。自治体の制度は住んでいる場所で有無も金額も変わります。この記事では国の制度を中心に解説します。自治体分は窓口で確認する項目として後述します。

精神障害者保健福祉手帳を持っているだけでお金はもらえる?

「手帳を取ったのに、何もお金が入ってこない」という声はよくあります。これは誤解ではなく、制度の仕組みそのものです。手帳と現金給付は別のルートで動いています。ここを整理すると、後の障害年金の話がすっきり理解できます。

手帳の取得だけでは現金給付は発生しない理由

精神障害者保健福祉手帳は、障害があることを証明する身分証です。手帳そのものに、お金を支給する機能はありません。手帳を持っているだけで振り込まれるお金は、国の制度にはありません。

現金を受け取るには、障害年金や手当をそれぞれ別に申請する必要があります。手帳の申請と年金の申請は、窓口も審査する機関も違います。手帳は市区町村、障害年金は日本年金機構です。片方を出しても、もう片方には何も伝わりません。

手帳の等級と障害年金の等級はなぜ一致しないのか?

手帳にも1〜3級があり、障害年金にも1〜3級があります。同じ数字なので、連動していると思いがちです。しかし、判定する基準も機関も別です。手帳2級でも障害年金は不支給、という結果は珍しくありません。

手帳は都道府県が「障害の程度」を認定します。障害年金は日本年金機構が「障害認定基準」で審査します。加えて、障害年金には初診日や保険料の納付状況という条件が加わります。数字が同じでも、意味は違うと覚えておいてください。

手帳があると受けられる減免・割引の一覧

手帳で現金はもらえませんが、負担軽減の入口にはなります。手帳を提示することで受けられる主な制度をまとめます。

制度・サービス 内容 主な条件
所得税・住民税の障害者控除 課税所得から一定額を差し引く 手帳所持(1級は特別障害者扱い)
NHK受信料の免除 全額または半額免除 世帯全員が住民税非課税、または1級
携帯電話料金の割引 各社の障害者向け割引プラン 手帳の提示
公共交通機関の割引 バス・地下鉄・タクシーなど 事業者により対応が異なる
公共施設の入場料減免 美術館・博物館など 施設ごとに設定

割引の有無は事業者や自治体で差があります。 特に鉄道は、精神手帳に対応していない事業者もあります。利用前に確認するのが確実です。

障害年金はいくらもらえる?令和8年度の金額

ここからが本題の障害年金です。金額は毎年4月に改定されます。この記事では令和8年度(2026年4月分から)の金額を使います。年金の種類は「基礎」と「厚生」の2階建てです。自分がどちらに当てはまるかで、受け取る額が大きく変わります。

障害基礎年金の1級・2級の年額と月額

障害基礎年金は、初診日に国民年金に加入していた人や20歳前に初診日がある人が対象です。自営業、学生、専業主婦(夫)、無職の人はこちらになります。等級は1級と2級のみです。

等級 年額 月額換算
1級 1,059,125円 約88,260円
2級 847,300円 約70,608円

1級は2級の1.25倍です。振込は偶数月の15日で、前2か月分がまとめて入ります。令和8年度の額は6月の振込から反映されます。

障害厚生年金の1級・2級・3級の計算方法

初診日に会社員や公務員として厚生年金に加入していた人は、障害厚生年金の対象です。障害基礎年金に上乗せされる形です。3級もあります。

等級 計算式 令和8年度の目安
1級 報酬比例部分×1.25+障害基礎年金1級 基礎分1,059,125円+厚生分
2級 報酬比例部分+障害基礎年金2級 基礎分847,300円+厚生分
3級 報酬比例部分のみ 最低保障額 年額635,500円

報酬比例部分は、過去の給料と加入期間で決まります。 同じ2級でも、月6万円台の人もいれば10万円を超える人もいます。3級には最低保障があります。給料が低かった人や加入期間が短い人でも、年額635,500円は確保されます。

子の加算・配偶者加給年金が上乗せされる条件

障害基礎年金の1級・2級を受ける人に、生計を維持している子がいると加算があります。18歳になった年度末までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の子が対象です。

加算の種類 対象者 令和8年度の年額
子の加算(1人目・2人目) 障害基礎年金1級・2級 各243,800円
子の加算(3人目以降) 障害基礎年金1級・2級 各81,300円
配偶者加給年金 障害厚生年金1級・2級 243,800円

配偶者加給年金は、65歳未満で生計を維持している配偶者がいる場合に付きます。加算は自動では付きません。申請時に戸籍や所得の書類を添えて届け出る必要があります。

精神障害で障害年金の対象になる病名と条件とは?

「精神の病気で年金なんて通らないのでは」と思っている人は多いです。実際には、精神障害は障害年金の受給者の中で最も多い区分です。ただし、病名だけでは決まりません。3つの要件と、審査で見られるポイントを押さえておきましょう。

対象となる主な精神疾患(うつ病・統合失調症・双極性障害・発達障害など)

障害認定基準では、精神の障害を大きく分類しています。主なものは次の通りです。

  • 統合失調症、統合失調症型障害、妄想性障害
  • 気分(感情)障害:うつ病、双極性障害
  • 症状性を含む器質性精神障害:高次脳機能障害、認知症など
  • てんかん
  • 知的障害
  • 発達障害:自閉スペクトラム症、ADHDなど

神経症圏(不安障害、パニック障害、適応障害など)は原則対象外です。 ただし、統合失調症やうつ病の症状を伴う場合は、その病態で審査されます。診断名が「適応障害」でも、実際の症状で判断されることがあります。

初診日・保険料納付要件・障害認定日の3つの要件

障害年金を受けるには、次の3つをすべて満たす必要があります。

要件 内容
初診日要件 その病気で初めて医師にかかった日に、国民年金または厚生年金に加入していた(20歳前も可)
保険料納付要件 初診日の前日時点で、加入期間の3分の2以上を納付または免除している。または直近1年間に未納がない
障害認定日要件 初診日から1年6か月経過した日(障害認定日)に、障害の状態が等級に該当する

初診日が特定できないと、審査の入口に立てません。精神疾患は最初に内科や心療内科を受診していることも多いです。受診歴をさかのぼって確認しておくと、後の手続きが楽になります。

精神障害の審査で重視される「日常生活能力」の判定とは?

精神障害の診断書には「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」という欄があります。食事、清潔保持、金銭管理、対人関係、通院と服薬など7項目を4段階で評価します。

この欄の評価が、等級を左右する中心です。 「1人暮らしなら問題なくできる」ではなく、「援助なしでどこまでできるか」を医師が記入します。診察のときに、実際の生活の困りごとを具体的に伝えておくことが大切です。家族と同居している場合も、援助を受けている実態を伝えてください。

働きながら障害年金をもらえる?

「働いているから対象外」と思い込んで申請しない人がいます。これは制度を知らないための損失です。障害年金に「働いていたらダメ」という規定はありません。ただし、精神障害の審査では就労状況が参考にされます。どんな働き方なら受給に影響しにくいのか、整理します。

就労していても受給できるケースと難しいケース

障害年金には所得制限がありません(20歳前傷病を除く)。フルタイムで働いていても、要件を満たせば受給できます。ただし、精神障害の場合は「働けている=日常生活能力が高い」と見られやすい面があります。

審査で考慮されるのは、仕事の内容と職場での配慮です。周囲の援助を受けながら働いている実態があれば、受給の可能性は残ります。 逆に、一般雇用で責任ある業務を単独でこなしている場合は、2級の認定は難しくなります。

障害者雇用・就労継続支援A型/B型での扱いの違い

働き方によって、審査での見られ方が変わります。障害認定基準にも、就労支援施設や障害者雇用での就労は「直ちに日常生活能力が向上したとは判断しない」と書かれています。

働き方 審査での扱い
就労継続支援B型 雇用契約なし。援助を前提とした就労とみなされやすい
就労継続支援A型 雇用契約あり。ただし配慮下の就労として考慮される
障害者雇用(一般企業) 配慮の内容が診断書や申立書で伝われば考慮される
一般雇用(配慮なし) 日常生活能力が高いと判断されやすい

診断書の「就労状況」欄と、病歴・就労状況等申立書の内容が一致していることが重要です。 職場でどんな配慮を受けているか、具体的に書きましょう。

精神障害で3級・障害手当金が認定される条件

3級は障害厚生年金だけにある等級です。「労働に制限を受ける程度」が基準です。2級は「日常生活に著しい制限」、3級は「労働に制限」と、見る対象が違います。

働きながら通院を続けている人は、3級の可能性を検討する価値があります。障害手当金は、5年以内に治った(症状が固定した)場合の一時金です。精神障害では「治った」と判断されることが少ないため、実務上はほぼ使われません。3級に該当するかどうかは、初診日が厚生年金加入中だったかで決まります。

年金生活者支援給付金はどんな人が受け取れる?

障害年金を受け取っている人でも、この給付金の存在を知らないケースがあります。理由は単純で、障害年金と別の手続きだからです。月額5,000〜7,000円ですが、年間では6万〜8万円の差になります。対象になる人は忘れずに申請しましょう。

障害年金1級・2級受給者に上乗せされる金額

対象は障害基礎年金の1級・2級を受けている人です。障害厚生年金1級・2級の人も、障害基礎年金を同時に受けているので対象になります。3級は対象外です。

等級 月額 年額
1級 7,025円 84,300円
2級 5,620円 67,440円

支給は障害年金と同じ偶数月に、年金とは別の振込として入ります。 年金の振込明細に含まれないので、通帳で確認してください。

前年所得の要件と申請方法

所得制限があります。前年の所得が4,721,000円以下(扶養親族がいる場合は加算)であることが条件です。障害年金自体は非課税なので、この所得には含まれません。給与など他の収入で判定されます。

申請は年金事務所または市区町村の年金窓口です。障害年金の請求と同時に「年金生活者支援給付金請求書」を出せます。すでに年金を受けている人には、対象になったときに日本年金機構から請求書が郵送されます。

障害年金と別に手続きが必要な理由

「年金をもらっているなら自動で付くはず」と考える人は多いです。しかし、給付金は年金法ではなく別の法律(年金生活者支援給付金の支給に関する法律)で運用されています。根拠となる法律が違うため、請求書も別です。

一度請求すれば、翌年以降は所得の審査だけで継続されます。 所得が基準を超えた年は支給が止まり、下がれば再開します。再開時にも手続きが必要な場合があるので、通知が届いたら中を確認してください。

特別障害者手当はいくら?精神障害でも対象になる?

特別障害者手当は、名前を聞いたことがあっても「身体障害の人向け」と思われがちです。実際は精神障害も対象に含まれます。ただし、認定される障害の程度はかなり重い水準です。金額と条件を正確に知って、該当するかどうかを判断してください。

令和8年度の月額と支給時期

特別障害者手当は、在宅で生活する20歳以上の人に支給されます。障害年金と同時に受け取れます。

項目 内容
月額 30,450円(令和8年4月分から)
支給月 2月・5月・8月・11月
支給方法 前月分までを3か月分まとめて振込
申請窓口 市区町村の障害福祉担当課

障害基礎年金2級と併せると、月額で約10万円になります。 金額の改定は毎年4月です。物価の変動率に応じて決まります。

精神障害で認定されるための障害の程度

認定の基本は「著しく重度の障害が重複している」または「同程度の障害」です。精神障害単独で認定される場合の目安は、障害年金1級相当の精神障害があり、さらに日常生活動作の多くに介助が必要な状態です。

手帳1級や障害年金1級だけでは、自動的に対象にはなりません。専用の診断書(精神障害用)を主治医に書いてもらい、日常生活の状況を細かく評価されます。食事、排泄、入浴などで常に介護が必要かが焦点です。

本人・配偶者・扶養義務者の所得制限

特別障害者手当には、本人だけでなく家族の所得制限もあります。令和8年8月分から限度額が引き上げられました。

扶養親族等の数 本人(受給資格者) 配偶者・扶養義務者
0人 3,758,000円以下 6,287,000円未満
1人 4,138,000円以下 6,536,000円未満
2人 4,518,000円以下 6,749,000円未満

扶養義務者とは、同居している親や子などです。 本人の所得が低くても、同居家族の所得が限度を超えると支給されません。また、施設入所中や3か月を超える入院中も対象外です。

20歳未満の精神障害者や家族が受け取れる手当とは?

障害年金は原則20歳からです。では、20歳未満の子どもに精神障害がある場合、何も受け取れないのでしょうか。答えは「本人向け」と「親向け」の2種類の手当があります。さらに、20歳になったときの障害年金にも特別なルールがあります。

障害児福祉手当の金額と対象

障害児福祉手当は、20歳未満の本人に支給される手当です。日常生活で常時の介護を必要とする重度の障害が条件です。

項目 内容
月額 16,560円(令和8年4月分から)
支給月 2月・5月・8月・11月
対象 20歳未満で常時介護が必要な在宅の障害児
所得制限 本人・扶養義務者ともにあり

精神障害や発達障害でも、日常生活に常時介護が必要な程度なら対象です。 認定は専用の診断書に基づいて行われます。

特別児童扶養手当の1級・2級の金額

特別児童扶養手当は、障害のある子を育てている父母や養育者に支給されます。障害児福祉手当と違い、受け取るのは親です。2つは同時に受け取れます。

等級 月額 障害の程度の目安
1級 58,450円 障害基礎年金1級と同程度
2級 38,930円 障害基礎年金2級と同程度

精神障害者保健福祉手帳の1級・2級を持つ子であれば、該当の可能性が高いです。支給は4月・8月・11月の年3回です。所得制限は受給する親の所得で判定されます。

20歳前に初診日がある場合の障害基礎年金の扱い

初診日が20歳前にある人は、保険料を納めていなくても障害基礎年金を受け取れます。20歳になった時点、または障害認定日から支給されます。発達障害や知的障害の多くはこのパターンです。

ただし、20歳前傷病の障害基礎年金には所得制限があります。 本人の前年所得が一定額を超えると、半額または全額が停止されます。扶養親族がいない場合、約370万円で半額停止、約472万円で全額停止です。通常の障害年金にはない制限なので、働く場合は注意してください。

自立支援医療で通院費はいくら安くなる?

精神科の通院は長期になります。診察代と薬代で、毎月数千円から1万円を超えることもあります。自立支援医療(精神通院医療)は、この自己負担を大幅に減らす制度です。手帳がなくても申請できます。通院している人は、まずこの制度から使い始めるのが順序です。

精神通院医療の自己負担が1割になる仕組み

通常、医療費の自己負担は3割です。自立支援医療の対象になると、精神科の通院・薬・デイケア・訪問看護の自己負担が1割に下がります。

対象は、指定した医療機関と薬局に限られます。申請時に「この病院、この薬局」と登録する形です。入院は対象外です。精神疾患以外の病気の治療も対象になりません。

所得区分ごとの月額上限

1割負担に加えて、月ごとの上限額があります。上限は世帯の所得区分で決まります。

所得区分 世帯の目安 月額上限
生活保護 生活保護世帯 0円
低所得1 住民税非課税で本人収入80万円以下 2,500円
低所得2 住民税非課税で本人収入80万円超 5,000円
中間所得1 住民税(所得割)3.3万円未満 5,000円(重度かつ継続の場合)
中間所得2 住民税(所得割)3.3万円以上23.5万円未満 10,000円(重度かつ継続の場合)
一定所得以上 住民税(所得割)23.5万円以上 20,000円(重度かつ継続の場合のみ対象)

「重度かつ継続」は、統合失調症、うつ病、双極性障害などが該当します。 中間所得以上でも、これに当てはまれば上限が適用されます。

申請窓口と更新の手続き

申請は市区町村の障害福祉課や保健センターです。必要なものは申請書、医師の診断書、健康保険証の写し、所得を確認できる書類、マイナンバーです。

有効期間は1年です。毎年更新が必要で、期限の3か月前から手続きできます。診断書は2年に1回の提出で済みます。手帳と同時に申請すると、診断書を1通で兼ねられる自治体があります。

税金や公共料金で受けられる減免・控除とは?

現金給付ではありませんが、税金や料金の減免は毎年効いてきます。障害者控除だけで、年間数万円の税負担が変わることもあります。手帳を持っているなら使わない理由はありません。ここでは国の制度と、自治体で確認すべき項目を分けて説明します。

所得税・住民税の障害者控除の金額

精神障害者保健福祉手帳を持つ人は、所得税と住民税で障害者控除を受けられます。手帳1級の人は「特別障害者」として控除額が大きくなります。

区分 所得税の控除額 住民税の控除額
障害者(手帳2級・3級) 27万円 26万円
特別障害者(手帳1級) 40万円 30万円
同居特別障害者(1級で扶養者と同居) 75万円 53万円

本人に収入がなくても、扶養している家族の側で控除を使えます。 親の年末調整や確定申告で申告すると、家族全体の税負担が下がります。障害年金は非課税なので、年金だけの人はそもそも所得税がかかりません。

NHK受信料・携帯電話料金・公共交通機関の割引

日常の固定費でも、手帳による割引があります。

  • NHK受信料:手帳所持者がいる世帯で、全員が住民税非課税なら全額免除。手帳1級で世帯主かつ受信契約者なら半額免除
  • 携帯電話料金:大手各社に障害者向け割引プランがある。基本料金や通話料が対象
  • 公共交通機関:バス、地下鉄、タクシーなどで割引を実施する事業者がある。鉄道は対応が分かれる
  • 有料道路:精神手帳は原則対象外。身体・療育手帳と扱いが違う

精神手帳の割引は、身体障害者手帳より対象が狭いのが実情です。利用したいサービスごとに、精神手帳が使えるかを確認してください。

自治体が独自に行う手当・助成の確認方法

市区町村によっては、独自の手当や助成があります。例として、心身障害者福祉手当(月額数千円)、医療費助成、交通費助成、水道料金の減免などです。

確認方法は、市区町村の障害福祉課で「手帳で使える制度一覧」をもらうことです。 多くの自治体が「障害福祉のしおり」のような冊子を用意しています。手帳の交付時に渡されることもあります。転居すると制度が変わるので、引っ越し後は改めて確認が必要です。

お金がもらえなくなる・減額されるのはどんなとき?

受給が決まっても、それで終わりではありません。所得の変化、手続きの忘れ、生活環境の変化で、支給が止まることがあります。特に「更新を忘れて止まった」というケースは多いです。事前に知っておけば防げるものばかりです。

所得制限を超えた場合の支給停止

制度ごとに所得制限の有無が違います。整理すると次の通りです。

制度 所得制限 判定される人
障害年金(通常) なし ―
障害年金(20歳前傷病) あり 本人
年金生活者支援給付金 あり 本人
特別障害者手当 あり 本人・配偶者・扶養義務者
特別児童扶養手当 あり 受給する親・配偶者・扶養義務者

通常の障害年金だけは所得制限がありません。働いて収入が増えても、年金額は変わりません。ただし、次の診断書提出時に等級が見直される可能性はあります。

更新(現況届・診断書提出)を忘れたときのリスク

障害年金は、1〜5年ごとに「障害状態確認届」(診断書)の提出が必要です。誕生月の3か月前に日本年金機構から送られてきます。提出が遅れると、年金の支払いが一時止まります。

特別障害者手当や特別児童扶養手当は、毎年8月に現況届を出します。 出さないと8月分以降が支払われません。手帳は2年ごと、自立支援医療は1年ごとの更新です。期限をカレンダーやスマホに登録しておくと安心です。

入院・施設入所・海外居住による影響

生活環境が変わると、支給に影響する制度があります。

状況 障害年金 特別障害者手当
精神科に入院(3か月以内) 継続 継続
精神科に入院(3か月超) 継続 停止
障害者支援施設に入所 継続 停止
海外に居住 継続(手続き必要) 停止

障害年金は入院しても止まりません。 一方、特別障害者手当は「在宅」が条件なので、長期入院や入所で止まります。退院後に再開する場合は、改めて届出が必要です。

生活保護と障害年金は同時にもらえる?

「生活保護を受けているから、年金はもらえない」「年金があるから、生活保護は無理」。どちらも正しくありません。2つは同時に受けられます。ただし、単純に合計額が手元に残るわけでもありません。仕組みを知ると、どちらを優先すべきかが見えてきます。

併給できるが生活保護費から年金分が差し引かれる仕組み

生活保護は「最低生活費」と「収入」の差額を支給する制度です。障害年金は収入として扱われます。年金が月7万円入ると、生活保護費が7万円減ります。手元に残る合計額は変わりません。

それでも年金を申請する意味はあります。生活保護には「他の制度を優先して使う」という原則があるからです。福祉事務所から障害年金の申請を求められることもあります。年金を受給すれば、将来生活保護を抜けたときに年金だけは残ります。

障害者加算が上乗せされる条件

生活保護には「障害者加算」があります。障害基礎年金1級・2級の受給者、または手帳1級・2級の人が対象です。等級と居住地域(1級地〜3級地)で金額が決まります。

加算額は月額でおよそ1.5万〜2.7万円です。 たとえば、障害年金2級を受け始めると、保護費から年金分が引かれる一方で、障害者加算が付きます。結果として、年金を取る前より手元に残る額が増えるケースがあります。

どちらを優先して申請すべきかの考え方

順番の目安は「障害年金を先に申請し、それでも足りなければ生活保護」です。ただし、障害年金は審査に3〜4か月かかります。その間の生活費がない場合は、生活保護を先に申請して問題ありません。

生活保護を受けながら障害年金を申請することもできます。年金がさかのぼって支給された場合、その期間の保護費は返還の対象になります。返還額は福祉事務所が計算します。全額を自由に使えるわけではない点は覚えておいてください。

国からもらえるお金の申請はどこに相談すればいい?

制度が分かっても、どこに行けばいいか迷う人は多いです。制度ごとに窓口が違うからです。相談先を間違えると、たらい回しになって時間を失います。まずは窓口の役割を整理し、必要な書類と、専門家に頼む判断基準まで押さえておきましょう。

年金事務所・市区町村障害福祉課・精神保健福祉センターの役割

相談先は目的で使い分けます。

窓口 扱う制度 できること
年金事務所 障害年金、年金生活者支援給付金 初診日の確認、納付要件の確認、請求書の受付
市区町村 障害福祉課 手帳、特別障害者手当、自立支援医療、自治体独自制度 各種申請、制度一覧の案内
精神保健福祉センター 精神保健全般 生活や就労の相談、制度の紹介
福祉事務所 生活保護 保護の申請、相談

障害年金の相談は、必ず年金事務所に予約を入れてから行きます。 予約なしだと長時間待つことがあります。年金手帳または基礎年金番号が分かるものを持参してください。

申請に必要な書類(診断書・病歴就労状況等申立書など)

障害年金の請求に必要な主な書類です。

  • 年金請求書
  • 診断書(精神の障害用):主治医が記入
  • 受診状況等証明書:初診の医療機関が記入(現在の病院と違う場合)
  • 病歴・就労状況等申立書:本人または家族が記入
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 戸籍謄本、住民票、所得証明書(加算がある場合)
  • 振込先口座の通帳の写し

病歴・就労状況等申立書は、本人が書く唯一の書類です。発病から現在までの経過、日常生活の困りごと、仕事の状況を時系列で書きます。診断書との整合性が審査で見られます。

社労士に依頼する場合の費用と判断基準

自分で申請することは可能です。ただ、精神障害の申請は書類の書き方で結果が変わります。社会保険労務士(社労士)に依頼する選択肢もあります。

費用の相場は、着手金0〜3万円、成功報酬が年金額の2か月分程度です。 不支給なら成功報酬は発生しない事務所が多いです。依頼を検討する目安は、初診日が古くて証明が難しい、転院が多い、一度不支給になった、体調的に書類作成が難しい、といった場合です。まずは年金事務所で要件を確認し、その上で判断すると無駄がありません。

精神障害者が国からもらえるお金に関するよくある質問

ここまで読んで、まだ細かい疑問が残っている人もいるはずです。手帳の等級、年齢、さかのぼり、同居、会社への影響。よく聞かれる5つの質問に答えます。

精神障害者保健福祉手帳3級でも障害年金はもらえる?

可能性はあります。手帳と年金は別の審査だからです。手帳3級でも、障害年金の審査で2級や3級と認定されることはあります。

ただし、確率としては高くありません。手帳3級は「日常生活または社会生活に制限がある程度」です。障害年金2級は「日常生活に著しい制限」が基準です。初診日が厚生年金加入中なら、障害厚生年金3級の可能性を検討してください。

障害年金は何歳から申請できる?

原則20歳からです。20歳前に初診日がある場合は、20歳の誕生日以降に請求します。障害認定日が20歳以降になる場合は、その日以降です。

上限は原則65歳の誕生日の前々日までです。 65歳を過ぎると、新規の障害年金請求は基本的にできなくなります。ただし、65歳前に初診日と障害認定日があれば、65歳以降でも認定日請求は可能です。

過去にさかのぼって障害年金を請求できる?

できます。障害認定日の時点で等級に該当していれば、「認定日請求」としてさかのぼって受給できます。これを遡及請求と呼びます。

さかのぼれるのは最大5年分です。5年より前の分は時効で消えます。認定日請求には、障害認定日から3か月以内の診断書が必要です。当時の診断書が取れない場合は、請求日から支給が始まる「事後重症請求」になります。

家族と同居していると手当はもらえない?

障害年金と年金生活者支援給付金は、同居の有無で影響を受けません。本人の要件だけで決まります。

影響するのは特別障害者手当です。 同居する配偶者や扶養義務者(親・子など)の所得が限度額を超えると、支給されません。同居していなくても、生計を同じくしていれば扶養義務者として扱われる場合があります。判定は市区町村が行います。

障害年金をもらうと会社に知られる?

日本年金機構から会社に通知が行くことはありません。障害年金は非課税なので、年末調整にも出てきません。自分から言わない限り、会社に知られる仕組みはありません。

例外は、障害者雇用で入社している場合です。 会社はすでに手帳の存在を知っています。それでも年金の受給状況までは把握しません。傷病手当金との調整がある場合は、健康保険組合に年金の受給を届け出る必要があります。

まとめ

精神障害者が国からもらえるお金は、障害年金を柱に、特別障害者手当、年金生活者支援給付金が重なる構造です。手帳は現金の入口ではなく、減免や控除の入口です。この区別がつくと、どの窓口に行くべきかが自然に決まります。金額は毎年4月に改定されるので、この記事の令和8年度の数字は次の改定まで有効です。

記事で触れていない制度に、傷病手当金があります。会社員が休職中に健康保険から受け取れるもので、最長1年6か月です。障害年金の障害認定日が「初診日から1年6か月」なのは、この傷病手当金の終了と接続する設計だからです。休職中の人は、傷病手当金を受けながら障害年金の準備を進める流れになります。今日できる行動は2つです。初診日の医療機関と日付を確認すること、そして年金事務所に相談の予約を入れることです。

参考文献

  • 「障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」-「日本年金機構」
  • 「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」-「日本年金機構」
  • 「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」-「厚生労働省」
  • 「年金生活者支援給付金制度について」-「厚生労働省」
  • 「特別障害者手当について」-「厚生労働省」
  • 「特別児童扶養手当・特別障害者手当等の手当額改定(令和8年4月分から)」-「厚生労働省」
  • 「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」-「日本年金機構」
  • 「精神障害者保健福祉手帳」-「厚生労働省」
  • 「自立支援医療(精神通院医療)の概要」-「厚生労働省」
  • 「特別障害者手当・障害児福祉手当」-「各都道府県・市区町村 障害福祉課」
  • 「所得税・住民税の障害者控除」-「国税庁」